東洋医学の心身の成長のしくみ その2

子どもの成長

子どもの頃、旺盛に体表面を流れている陽気はある時期が来ると体の奥深くに納まります。そのある時期というのが、「思春期」です。

「思春期」はよく「子どもでもない大人でもない時期」という風に表現することがありますが、とても的を得た言葉だなと思います。

前回も言いましたが、「思春期」になると体表に旺盛に流れていた陽気が体の奥深い部分(臓器)に納まり、体の深い部分にある「五臓」を中心とした活動スタイルにシフトするわけなんですね。精神の意識も外向きから内向きにシフトします。そういった様に今までにない身体の活動スタイルに変わるので、一時的に心身が安定しないことが出てきやすくあります。
それが「思春期」の特徴です。

例えば中学生に上がったら「口数が減ってきた」、「親にやつ当たりする様になった」、「聞く音楽が激しいメロディになった」とかって聞いたことがありませんか?
これは、体のしくみが陽(発散:動的・外向きの力)から陰(収斂:静的・内向きの力)にシフトしたために、一時的に崩れる心身のバランスを自分のペースで取ろうとする現われなんですね。
だんだんこの現象が落ち着いてきたなと思った時が来れば、体が大人になった時期だということです。
「思春期」を迎えるタイミングは、男の子は、「声変わり」。女の子は、「月経が来た」ときです。

子どもの体のしくみの話の流れで一番大事なことをお伝えしたいのが、東洋医学(鍼灸・漢方)の視点での小児治療は、大人になってから行うより小さなころに行う方が改善または完治しやすくあるという事です。
子どもの頃は、主に「体表面」を中心にエネルギー活動が盛んに行われてものが、大人になると「体の奥深くにある五臓」を中心に行われてくるという流れでしたから、病の発生しやすい部位もそれに連なって、子どもであれば浅く(体表)、大人であれば深い(体の深部)部位に発生しやすいんですね。病が深い部位に発生するという事は、治療にかける時間もそれだけ長くなり、複雑になる事が多いんですね。これが子どもの内に治療を進めておく理由になります。
子どもの成長のしくみと共に覚えておいていただけたら幸いです。

鍼灸師 力石陽平